第15集

置き土產

 今、この針と絲と手を使つて、一所懸命自前のティッシュ——すなはちハンカチを縫つてゐるのだが、私が使つて終りだよなといふ儚さ、虛しさを感じる。

 子供のゐる事の充實感といふのは、ここで發揮されるのであらう。實際に子供が生殘れるかはともかく、生殘る方法は殘しておけるのであるから。謂はば書殘すとは、誰かが私の文章を通して、私の子供になつてくれる事の期待である。

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公開:2022年5月8日

初出:2019年3月23日

著:絲

適用:CC0[著作權抛棄]

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