第14集

|忠誠《かくやく》

 ポン、と手を置きたい

 重ねるだけでいい

 それで

 それで

 一週間でも

 一日でも

 一瞬でも

 幸せだ——

 ——そんなの噓だつたけど

 手が離れた瞬間から

 迷ひが生じ

 私は次を求めてゐる

 求めてゐる

 次を、

 片想ひつて何だらう?

 肩重い、

 あなたの幸福をもみほぐして

 こんなにもらつておいて

 片想ひもクソも無い

 溫情を缺いておいて

 想ひもクソも無い

 そんな利益ではかるのは

 無駄だらうか

 あなたに對しての不尊

 しかしながら

 この|音《おん》さへもなければ

 私はあなたに懷かなかつたでせう

“どうして私に

 やさしくしてくれる”

 その答へを求めるのは

 野暮でせう

 あなたに强制したい

 十字架

 踏繪

 私はあなたからの確約を

 待つてゐるのでせう

 望んでゐるのでせう

 求めるのがいけないとは

 言ひませんけれども

 いささか

 意地汚い

 行爲

 ただ純粹な好意

 そして變らぬ

 忠誠を

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公開:2022年5月8日

初出:2019年3月23日

著:絲

適用:CC0[著作權抛棄]

📚 gemini://sinumade.pollux.casa/sinumade/2019/14/481.gmi