第14集

正直者

芥川龍之介『文章と言葉と』

 芥川の著作について、私のした事は——少なくとも表現上は——正しかつたのだ、と思つた。私にも曖昧な書き方はできない。それは完全に噓だし、餘所行きの顏である。少なくとも、世話になつた人間にする態度ではない——だと思つたから、私は正直に書いたのだ。それを包み隱して書くべきと言ふなら、私には文才も無いし、人の心すら無いのだらう。それでいい。あなたが附合つてゐたのは、そんな人間なのだから。ここで今露見して、あなたもほつとしてゐるだらう?

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公開:2022年5月8日

初出:2019年3月23日

著:絲

適用:CC0[著作權抛棄]

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