第7集

つもり

 皆が弘吿を貼つたり、流行りの文を量產したり、「好き」な事とは【何ら關係の無い】事で生計を立てようとしてゐる——いや、「好きな事で生計を立ててゐる」【つもり】になつてゐる。こんな哀しい事があるだらうか? 滑稽だ。一々顧客がゐるかどうか氣にするなんて馬鹿げてゐるし、何より面倒だ。「自由に振舞」へるから、「好き」なんぢやないか、「自然」そのものではないか。「價値あるものを提供してゐる」といふ幻想がある。寧ろ書く事の效用なんて、「『價値あるものを提供してゐる』と【信じる】」事にあるんぢやないか。實際に「價値」があるかどうかなんて、他人が見定める事だし、作り手には「價値あるものを出した」といふ滿足感しかなく、その確信自體が、「創造」の報酬なのだ。

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公開:2022年5月8日

初出:2018年6月9日

著:絲

適用:CC0[著作權抛棄]

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