第6集

或る人に宛てた私信より

 大體、「生命をかける」つてなんなのか。命を削らない瞬間が、いつあるといふのか。どんなに下らないと思へる瞬間も、私たちは死に向つて生きてゐて、だから、「心を込めてゐる」とか、「情熱的」とかいふのは、氣分の問題でしかない。さういつた瞬間瞬間に優劣をつけるとしたら、生の否定だらうといふ。綺麗なところしか持つていかなくて、耽美的な「詩」といふのは、そんな綺麗事ばつかりだから、眼に觸れてもくどいものばつかりだ。

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公開:2022年5月8日

初出:2018年3月27日

著:絲

適用:CC0[著作權抛棄]

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