土踏まず
朝の九時から五時まで
夜の九時から五時まで
車には澁滯すると疎まれ
|住民《ひと》にはうるさいと|通報《しら》され
|步行者《わたし》にはあはれだと思はれ
制服姿の皆は 砂利と騷音と寒さに耐へながら
ただ仕事をしてゐる ——それが仕事だから
たまにコンビニによつて 愚癡をこぼしながら
|同僚《みんな》の分の 煙草を買つていく
二週間が過ぎて
夜が明けると
眞つ黑でつややかな
なめらかなアスファルトが出現する
車たちは|普段《いつも》よりちよつと上機嫌になつて
その上を滑つてゐる
いつもが戾り
鮮明な白線が淸々しい
「お疲れ樣です」
行爲は地になつて
でもとてもありがたい
土踏まずには 生きられぬから
公開:2022年5月8日