第12集

書翰集

 たつた一人の女に宛てたお手紙も

 たつた一人の無關係な女が讀みまして

 自分に宛てられたやうにほつとする

 思ふに これは

 これは 人への愛

 純粹な愛に求めるところ

 萬人に求めるところ

 なぜといふに

 一番美しいと思ふものを あなたは愛しただらうから

 ですから

 たつた一人の無關係な女は

 たつた一人の無關係な男の言葉に

 沁み入るのです

 愛を感ずるのです

 愛が傳ふから ラヴレター

 愛を傳へるから ラヴレター

 君の言葉は

 見事に私を

 口說かれました

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公開:2022年5月8日

初出:2018年11月12日

著:絲

適用:CC0[著作權抛棄]

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